【身体障害者補助犬の普及活動への支援】 スカラー研修報告 2002年 (2)

犬学ゼロからの出発

医療法人かりゆし会ハートライフ病院 リハビリテーション科
比嘉悦子(ひが・えつこ)

 平成14年5月から11月にかけ、日本介助犬アカデミー企画による介助犬トレーナーの奨学生として様々な研修へ参加させていただきました。そのまとめと今後の抱負についてご報告致します。

1. はじまり「介助犬トレーナー研修生募集」

 理学療法士・作業療法士を対象にアメリカへの研修生派遣の企画・助成を開始します。この公告をきっかけに、人間と犬が暮らしやすい社会を作りたいという動機で応募し、貴重な経験の機会を得ることができました。

2. 国内研修

 アメリカでの研修に先駆け、日本介助犬アカデミー常任理事の山_恵子先生より、その後数カ月の研修の予備知識をすべて網羅する200%濃縮ジュースのような研修があり、また法学や障害福祉学・獣医学などの専門知識に関する研修へも参加しました。

3. 米国研修<7月26日〜10月8日>

介助犬育成において医療人としての責任を説いて頂いたスーザン・ダンカン女史

 アメリカでの最初の滞在先は、自らが介助犬使用者で、介助犬の現状と課題等についての講演や行政・企業等への教育活動、使用者の相談業務を多忙にこなすスーザン・ダンカンさんのお宅でした。

 介助犬先進国である米国では、育成体制が確立しているのだろうと考えていたのですが、スーザンさんの講義やその他使用者との面談を通して、日本同様さまざまな問題があることを知りました。

 介助犬を育成する上での訓練士と医療チームの連携の重要性や、医療側による介助犬についての学術的調査・研究の必要性を痛感し、それらが介助犬の普及には不可欠であると認識しました。

ワシントン州立女性刑務所でのペットパートナーシッププログラム見学

 このプログラムは、受刑者の社会復帰に役立てるためドックトレーナーやトリマーの技術習得を目的の一つに挙げていますが、これまでに介助犬を数頭育成した実績のあるプログラムです。訓練犬は捨て犬や迷い犬等シェルターで保護された犬達です。人間と犬との心の絆は、受刑者の更正に効果をもたらし、再犯率の低下に繋がっているそうです。また、犬達にとっても基礎トレーニングを受けることで里親探しが容易となり、人・犬双方に有益なプログラムとなっています。

 そこで私達は、訓練犬を対象に、介助犬適性評価テストを経験させて頂きましたが、自分好みの犬を選ぶ傾向にあり、主観が入ってしまいました。効率の良い育成には、より適性の高い犬を選択することが先決であり、客観的な評価基準を理解する必要があると感じました。

メイン・ディッシュ、チキン・トレーニング

 犬のトレーニング研修でチキン? にわとり?? 何をするの??? 百聞は一見に如かずです。ここにはトレーニングの極意が詰まっています。

 にわとりはかしこいです。学習します。『でも私達はもっとかしこい!自信を持て!』ボブ・ベイリー師匠のお言葉です。

第9回 全米ドックトレーナー会議

 参加者数が800名を超える、年1回の全米トレーナー会議へ参加しました。

 問題行動をテーマとしたものや学習理論に関するものなど、5日間に渡り約50の演題がありました。中には「犬は易しい、でも人は?」という、犬の躾はシンプルだけど飼い主への指導は手間が掛かる、といった内容のものもありました。

 介助犬に関連するネットワークもでき、たくさんの収穫がありました。

 これらはほんの一部です。実際のトレーニングに加え、犬の学習原理や行動学についての講義に多くの時間が費やされました。また、フラワーエッセンス*1や自然食、Tタッチ*2など犬の生活の質を改善してあげるのに役立てたい内容の講座も盛り込まれていました。

4. 感謝の意を込めて

 2カ月半米国で生活し、家族の中での犬の位置付けが日本の文化とは随分異なっており、社会における犬の浸透度も日本とは大分開きがあることを強く感じました。

介助犬が日本で普及するためには、多くの課題があります。先進国である米国も改善すべき点が多くあります。米国を手本としながら、しかし同様な問題を歩まぬよう注意深く努力していかなくてはならないと思います。

 この研修に参加するに当たり、貴社をはじめ、本当にたくさんの方々にお世話になり、助けて頂きました。各研修へ参加する度に、介助犬育成・社会啓蒙に携わる人々の熱意に励まされてきました。微力ながら、その熱意に応えるよう精進を重ねていくつもりです。介助犬が使用者に勇気を与えてくれるように、私も夢を持って介助犬の普及にできるところから取り組んでいきたいと思います。

 皆様、本当にありがとうございました。

*1 フラワーエッセンス:一般的には、花や植物の生命エネルギー(波動や気)を水に転写したもののことで、古くはアポリジニが、開いた花についた朝露を飲んで病気を癒したことで知られています。(アロマテラピーは、花や植物から抽出した物質そのものですので、両者は全く違います。また、医薬品でもありません。)

*2 Tタッチ:「テリントン・タッチ」神経系を目覚めさせる触り方。親指を除く4指で触り、円を描くように軽くゆっくりほぐす。おもちゃに食べ物を入れて与えながら、大きな筋肉(肩など)から触っていくとよい。

■(写真上) 滞在先のスクイム(ライアン氏がお住まい)は、ラベンダー畑があちらこちらに広がる美しい街です。

■(写真左) 日帰りで出かけた、カナダ・ビクトリアの"ブッチャート・ガーデン"で見つけた犬用の水飲み場。ペットドッグも園内入場が許可されています。

■にわとり&私。チキントレーニングの相棒です。 ■シェルター内の写真です。猫の部屋ですが、1匹ずつの生活歴やしつけに関する記録が閲覧できるようになっています。