【身体障害者補助犬の普及活動への支援】 スカラー研修報告 2003年 (1)

米国介助犬研修に参加して

神奈川県立保健福祉大学 リハビリテーション学科 助手
林 純子(はやし・じゅんこ)

 私たち日本介助犬アカデミー研修生は、今年8月7日に日本を発ち10月31日までの約3カ月、米国ワシントン州で介助犬研修を受講しました。その間、日本では10月に「身体障害者補助犬法」が全面施行となり、認定介助犬とその使用者は5組(12月1日現在)になったと聞きました。身体障害者のリハビリテーションに関わる私たち作業療法士(OT)と理学療法士(PT)は、この介助犬をめぐる社会の動きに遅れないよう、犬という動物について、介助犬の能力やその限界について理解しなければなりません。

 今回の研修内容は、犬の行動の特徴とトレーニング方法、米国における介助犬の現状、動物介在療法の3つでした。ここでは前記2つについてご報告したいと思います。

犬の行動の特徴とトレーニング方法

 今回の研修は、家庭犬の基礎的なしつけから介助犬育成・訓練まで、犬を従来の「強制法」ではなく「誘導法」によって訓練している8名のトレーナーによって教授されました。彼らは日本でも有名な家庭犬トレーナー、元イルカの訓練士、警察犬トレーナー、刑務所の介助犬育成プログラムのトレーナーたちで、バック・グラウンドは様々でした。しかしどのトレーナーも、単に犬をしつける・訓練するというだけではなく、その犬の飼い主を援助しようと、犬という動物を探求し人間と犬とのよりよい関係を模索している方ばかりでした。

 リハビリの訓練士としては「犬の訓練」はあまりなじみのない分野でしたが、犬の望ましい行動を見つける、やさしいことから段階づけて強化する、うまくできたら誉める、というやり方は、どこか共感できるものでした。もちろん人間はもっと複雑な生き物ですが。具体的には「カーミング・シグナル」という、犬がストレスを感じている時に見せる行動(ボディランゲージ)についてと、学習と条件付けについて勉強しました。今回の研修の中でとても勉強になった内容のひとつでした。

米国における介助犬の現状

 米国の介助犬の歴史は30年余りと長く、1990年に施行された「障害のあるアメリカ人のための法律(以下ADA法)」によって、社会の介助犬の受け入れは日本より進んでいます。介助犬使用者と街へ出ると、小さな子供が「あなたの犬を撫でてもいいですか?」と使用者に聞いてくる場面に出くわし、仕事をする犬とその使用者に対する社会の認識が広まっていると感じました。

 しかしADA法では、介助動物を「どんな障害を持つ人も、その人の役に立つ動物ならなんでも」と広く定めているため、介助犬の質、介助犬使用者の障害、介助犬養成団体の質はさまざまでした。また、介助犬使用者は介助犬同伴での社会参加の機会は保障されてはいるものの、福祉・医療の介入がほとんどないため、介助犬としての機能(能力)が不十分な犬に苦労しているケースも見られました。これから介助犬が増えつつある日本でこのような問題が発生しないようにするため、「身体障害者補助犬法」ができたのだということがよくわかりました。この法律がうまく機能してゆけば、日本は介助犬の先進国である、と言えるようになるのではないかと思います。

今後の展望

 「身体障害者補助犬法」では、介助犬使用者は「肢体不自由によって日常生活に支障をきたすもの」、介助犬は「肢体不自由を補う補助を行う犬」とされています。しかし米国でも日本でも、介助犬に関する研究は介助犬使用による心理社会的効果、といった内容がほとんどで、介助犬の介助機能を客観的に検証したものは皆無に等しい状況です。リハビリテーションに関わる私たちには、この分野の研究は必至です。少しでも多くの作業療法士・理学療法士が介助犬に興味を持ち、介助犬の介助機能に関する客観的研究に取り組み、介助犬の適応とリスクについての知識を蓄積し、使用者から相談を受けたときに適切に応じられるよう、活動してゆきたいと思います。

今回の研修によって、介助犬使用経験の長い米国のトレーナーや使用者から多くの課題を学ぶことができました。最後になりましたが、今回の作業療法士・理学療法士のための介助犬研修の援助をしてくださったゼノアック様に、深く感謝いたします。