【身体障害者補助犬の普及活動への支援】 スカラー研修報告 2003年 (3)

これからの介助犬 〜私がアメリカで考えたこと〜

藍野医療福祉専門学校 作業療法学科 専任教員
吉田 文(よしだ・あや)

1.アメリカ合衆国の問題

 アメリカ合衆国(以下アメリカ)では、研修の中で介助動物の一種である介助犬の使用者の方々4名にインタビューをさせていただいた(但し1名は盲導犬使用者)。その他、育成団体などを通じてお会いした使用者の方々から伺ったお話や、見学から感じたことも総合すると、アメリカの介助犬使用者が現在何の苦労もなく社会生活を送り、前途洋々の未来を持っている訳ではないと思われた。

 アメリカではADA法によって介助動物が定義されているが、国による認定制度や経済的補助はなく(一部を除き)、介助犬の導入時や使用者との訓練時に医療職者の評価は必要ないため、育成団体と使用者の2者の間で介助犬についてのほぼ全てが決定される。そのために介助犬費用の問題、介助犬導入に対する慎重な評価に欠けること、育成団体と使用者の対等でない関係、不適切な介助内容、介助犬の機能を果たしていない犬などの問題が生じていた。

 これらの問題は法律策定前の日本でも起こっており、現存する問題であるが、海外の介助犬先進国の事情や日本の介助犬フロンティア達の問題を鑑みて策定された日本の法律が、今後使用者と介助犬の豊かな生活を日本でどのように創造するのか楽しみなところである。しかしこの法律を動かす「人」がそれぞれの責任を果たさなければ、法律も有効に機能しない。この「人」の育成が今後の介助犬問題の鍵になるだろうと考える。

2.これから私たちは何をする必要があるか

介助犬の問題は介助犬使用者を取り囲む「人」の問題として、介助犬候補の育成から社会参加までの各段階で考えられるだろう。「人」とは使用者であり、トレーナーであり、動物の専門家、人の医療の専門家、社会の人々である。その中で私たち医療職者は、使用者の評価と介助犬合同訓練時の評価、社会参加時のフォローアップに関わる。このためには使用者候補の障害評価だけでなく、犬との社会生活に伴う責任、介助犬の有効性・可能な介助内容、安全な介助犬の訓練方法、介助犬引き渡し後の支援の必要性などを知らなければ、適切な介助犬の処方はできない。また合同訓練が始まってからも介助内容・介助方法が適切かを評価しなければならない。これらの情報を医療職者に正しく広めることが必要だろう。特に、自助具の処方に直接関わることが多い作業療法士が、"生きた自助具"である介助犬の情報を持つことが、介助犬の適切な処方・使用、スムーズな社会参加につながると考える。

 おそらく当面私たちにできることは、介助犬についての正しい情報を、同じ作業療法士や作業療法を学ぶ学生に伝えること、適切な処方のための情報を蓄積する研究を行うこと、その仲間を増やすことだろう。またもちろん医療職者だけでなく、介助犬に関わる全ての「人」がうまくチームを組んで協力していくこと、介助犬を受け入れる「人」がたくさんいる社会をつくることが重要である。それぞれの分野で「人」が適切に機能するために、チームのリーダーとなれる専門家を育てることはとても難しい方法であるが、近道でもあるように思う。アメリカでお世話になったある方が「犬のリーダーは問題に対し我先に行動するのではなく、少し離れた場所から問題を眺め、仲間に指示するのだ」と話して下さった。批判的に物事を考える客観性を持ち続けることも、アメリカで学んだことのひとつである。

 最後にこの貴重なチャンスを与えて下さったゼノアックの皆様、ご協力いただいたアメリカと日本の介助犬使用者の皆様、その他関係者の皆様に深く感謝いたします。

■アメリカの育成団体、公共の場所での合同訓練 左は介助犬トレーナー、右はウォーカーを使って歩行している使用者